包括受遺者とは何なのでしょうか。
相続の手続きを行う際、包括受遺者について気になる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、包括受遺者について以下の点を中心に解説していきます。
- 包括受遺者とは
- 包括受遺者と相続人の違いとは
- 包括受遺者にも相続税はかかるのか?
包括受遺者について理解するためにもご参考いただけると幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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包括受遺者とは?
包括受遺者とは、遺言書で遺産の全部または一部を相続する者です。
包括受遺者は、遺産の全部または一部を単独で相続することになります。
そのため、包括受遺者は、遺産の分割や相続人同士の争いなどの心配がありません。
包括受遺者には、遺産の全部を相続する「包括受遺者」と、遺産の一部を相続する「部分包括受遺者」の2種類があります。
包括受遺者になるためには、遺言書で「包括受遺者」と明記する必要があります。
包括受遺者のメリット
包括受遺者は、法定相続人ではない場合でも、遺言書で指定された範囲の遺産を相続することができます。
これは、遺言者が自由に財産を処分できるためです。
以下メリットをまとめました。
法定相続人よりも優先して相続できる
包括受遺者は、法定相続人よりも優先して相続することができます。
そのため、法定相続人よりも多くの遺産を相続できる可能性があります。
遺産分割協議に参加できる
包括受遺者は、法定相続人ではない場合でも、遺産分割協議に参加することができます。
そのため、遺産分割の際に、自分の意見を主張することができます。
このように、包括受遺者には、法定相続人よりも多くのメリットがあります。
遺言書で包括受遺者として指定されることは、相続人にとって大きなメリットとなるでしょう。
包括受遺者のデメリット
包括受遺者には、いくつかのデメリットがあります。
以下で解説します。
遺産のすべてまたは一部を相続する義務がある
包括受遺者は、遺言書で指定された範囲の遺産を相続する義務があります。
そのため、相続したくない遺産がある場合は、遺言書の変更を検討する必要があります。
遺産の一部を相続する場合には、相続税の納税義務がある
包括受遺者が遺産の一部を相続する場合には、相続税の納税義務があります。
そのため、相続税の対策を検討する必要があります。
包括受遺者の種類とは
包括受遺者は、相続人のように遺産分割協議に参加する必要はなく、遺言の内容に基づいて財産を受け継ぎます。
包括受遺者には、以下の4種類があります。
- 全部包括受遺者
被相続人の財産全て(プラスの財産とマイナスの財産を含む)を相続します。 - 割合的包括受遺者
被相続人の財産の一定割合を相続します。
例えば、「全財産の2分の1をAに遺贈する」という遺言の場合、Aは割合的包括受遺者となります。 - 特定財産を除いた財産についての包括受遺者
特定の財産を除いた被相続人の財産全てを相続します。
例えば、「土地はBに、その他の財産はCに遺贈する」という遺言の場合、Cは特定財産を除いた財産についての包括受遺者となります。 - 清算型包括受遺者
被相続人の財産の清算(負債の支払いなど)を行った後に残った財産を相続します。
それぞれの包括受遺者には、相続する財産の範囲や、負債の支払い義務などが異なるため、遺言の内容をよく確認する必要があります。
包括遺贈と特定遺贈の違い
包括遺贈と特定遺贈の違いは、包括遺贈は特定の財産を贈与するものであるのに対し、特定遺贈は遺産の全部または一部を贈与するものである点です。
例えば、特定遺贈は、故人の所有する特定の不動産を特定の相続人に贈与するものです。
一方、包括遺贈は、故人の所有するすべての財産またはその一部を特定の相続人に贈与するものです。
包括遺贈と特定遺贈の違いは、遺産の分割方法に影響を与えます。
包括遺贈の場合は、遺産の分割方法は遺言書に記載された通りに行われますが、特定遺贈の場合は、遺産の分割方法は遺言書に記載された特定の財産の価値によって決まります。
遺言書を作成する際には、包括遺贈と特定遺贈の違いを理解した上で、どちらの遺贈方法を採用するかを検討することが重要です。
包括受遺者と法定相続人の違い
包括受遺者は、遺言によって特定の財産ではなく、被相続人の財産全体を受け継ぐ者を指します。
一方、相続人は、法律によって定められた遺産を受け継ぐ権利を持つ者です。
両者の主な違いは以下の通りです。
- 権利と義務
包括受遺者は、相続人とは異なり、必ずしも同じ権利と義務を有しません。
包括受遺者は、遺言で指定された特定の財産を取得するか、遺産のすべてを取得するかのどちらかです。
一方、相続人は、民法で定められた法定相続分に基づいて遺産を取得します。
- 法定相続分
包括受遺者は、法定相続分とは異なり、遺産の一定割合を取得する権利を有しません。
相続人は、民法で定められた法定相続分に基づいて遺産を取得します。
- 代襲相続
包括受遺者は、代襲相続をすることはできません。
代襲相続とは、死亡した相続人の代わりに、その子や孫が相続する制度です。
- 法人の相続
包括受遺者には、法人も含まれます。
一方、相続人には、法人は含まれません。
包括受遺者と法定相続人との関係
包括受遺者と法定相続人との関係はどういうものなのでしょうか。
以下で解説します。
包括受遺者と遺産分割協議
遺産分割協議において、包括受遺者と法定相続人の関係は、包括受遺者が遺産の一部を相続する場合と、遺産のすべてを相続する場合で異なります。
遺産の一部を相続する場合
包括受遺者は、法定相続人と同等の権利と義務を有しません。
そのため、遺産分割協議においては、他の法定相続人とともに、遺産の分割方法について協議に参加する必要があります。
遺産のすべてを相続する場合
包括受遺者が遺産のすべてを相続する場合、遺産分割協議に参加する必要はありません。
これは、包括受遺者が遺産のすべてを相続する権利を有するためです。
このように、遺産分割協議において、包括受遺者と法定相続人の関係は、包括受遺者が遺産の一部を相続する場合と、遺産のすべてを相続する場合で異なります。
また、法定相続人が遺言の存在を隠したり、包括受遺者に伝えない場合、遺産分割協議は無効になる可能性があります。
例えば、法定相続人である受遺者が遺言の存在を知らずに法定相続分通りの協議を成立させた場合でも、隠されていた遺言を発見すれば、協議をやり直すことができます。
対応策と解決方法
1.遺言の存在を隠す行為は違法
法定相続人が故意に遺言を隠したり、包括受遺者に伝えない行為は違法です。
民法第902条では、遺言は法定相続分に優先する旨が定められています。
つまり、遺言の内容が有効であれば、法定相続分とは異なる遺産分割が可能になります。
遺言を隠す行為は、他の相続人の権利を侵害する行為であり、以下のような問題が発生する可能性があります。
- 遺言の内容に沿った遺産分割が行われない
- 遺産分割協議がやり直しとなり、紛争に発展する
- 隠した相続人が相続欠格となる
特に、包括受遺者は、遺言によってすべての財産を相続する権利を持つため、遺言の存在を知らないことは大きな損失となります。
2.遺言の存在を隠した場合の対応策
遺言を隠した場合、以下の対応策が考えられます。
- 速やかに遺言の内容を他の相続人に伝える
- 弁護士に相談し、適切な対応を取る
- 家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てる
遺言を隠したことが発覚した場合、他の相続人からの不信感や反感を買う可能性があります。
円満な解決を目指すためには、早期に事実を伝え、誠意を持って対応することが重要です。
包括遺贈の無効を主張される場合がある
法定相続人が存在する場合でも、包括遺贈によって遺言者の意思が優先されます。
しかし、法定相続人には遺留分と呼ばれる最低限の相続財産を請求する権利があります。
包括遺贈によって遺留分が侵害されると、法定相続人は遺留分減殺請求を行い、遺留分を補充することができます。
さらに、法定相続人は以下の理由で遺言の無効を主張し、包括遺贈を覆す可能性があります。
遺言が無効になる場合
- 遺言者が認知症などで遺言能力を欠いていた
- 遺言書の内容が不自然
- 遺言作成時に脅迫や詐欺があった
遺言の無効を主張された場合
- 話し合いで解決:包括受遺者が法定相続人に金銭を支払うなど、双方合意の上で解決を目指すことができます。
- 裁判:話し合いが成立しない場合は、法定相続人が裁判を起こす可能性があります。裁判で遺言が無効と判断されると、包括受遺者は遺贈を受けることができなくなります。
包括受遺者も遺産分割協議に参加するか?
包括受遺者も、一定割合の包括遺贈を受けた場合は、遺産分割協議に参加する必要があります。
遺産の全部が包括遺贈された場合
遺産の全部が包括遺贈された場合、相続財産を他の相続人と共有することはありません。
また、すべての財産を包括受遺者が受け取るため、財産の分け方を決める必要はありません。
そのため、包括受遺者は遺産分割協議をする必要がありません。
包括受遺者は、相続人と同じ権利と義務を持つとされています(民法第990条)。
つまり、包括遺贈が実施された場合、事実上相続人が増加したのと同じ状況になります。
なお、包括受遺者以外に法定相続人がいる場合、法定相続人から遺留分侵害額請求をされる場合があります。
以下に、遺産の全てが包括的に遺贈された場合の特徴をまとめます。
- 相続財産を他の相続人と共有しない
- 遺産分割協議をする必要がない
- 相続人と同一の権利義務を有する
- 法定相続人から遺留分侵害額請求される可能性がある
遺産の全部が包括遺贈された場合、相続財産をどのように扱うかは、包括受遺者の判断に委ねられます。
遺産の一部が包括遺贈された場合
遺産の一部が包括遺贈された場合、包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有し、相続人と遺産を共有することになります
そのため、負の遺産も受け継ぎ、遺産分割協議に参加することになります。
また、相続人と同じように遺留分侵害額請求をすることができ、相続税を負担することになります。
包括受遺者は、遺言によって遺産の一部を包括的に譲り受けた者です。
包括遺贈を受けた場合、包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有することになります。つまり、相続人と遺産を共有することになり、負の遺産も受け継ぐことになります。
また、遺産分割協議に参加する権利と義務も有します。
さらに、包括受遺者は相続人と同じように遺留分侵害額請求をすることができます。
遺留分とは、相続人が最低限受け取るべき遺産の割合のことです。
遺言によって遺留分を侵害された相続人は、遺留分侵害額請求をすることで、遺留分相当額の遺産を請求することができます。
包括受遺者にも相続税はかかるのか?
包括受遺者にも相続税はかかります。
包括受遺者は、遺産のすべてを相続する場合には、遺産の総額に対して相続税を納めることになります。
例えば、遺言書で「私の財産は、私の妻にすべて相続させる」と記載されている場合、妻は包括受遺者となります。
妻は、遺産の総額に対して相続税を納めることになります。
なお、包括受遺者は、遺産の一部を相続する場合には、相続した財産の価額に対して相続税を納めることになります。
以下に、包括受遺者の相続税の計算方法を説明します。
- 遺産の総額を算出します。
- 遺産の総額から基礎控除額を差し引きます。
- 差し引いた金額に対して、相続税率を乗じて、相続税額を算出します。
例えば、遺産の総額が1億円で、基礎控除額が3,000万円の場合、相続税額は以下のようになります。
○1億円-3,000万円=7,000万円
○7,000万円×10%=700万円
したがって、包括受遺者は、700万円の相続税を納めることになります。
包括受遺者となった場合には、相続税の申告・納税が必要となります。
相続税の申告・納税は、相続開始から10か月以内に行う必要があります。
包括遺贈は、すべての財産を受け継ぐことができる一方で、相続税の負担が大きくなる可能性があります。
相続税の計算方法やその他の注意点などを理解した上で、慎重に検討することが重要です。
包括受遺者ができること
包括受遺者は、相続人とほぼ同じ権利と責任を負います。
具体的には、以下のようなことが可能です。
- 遺産の管理
- 相続開始時から、被相続人の財産一切の権利義務を承継します。
- 具体的には、預貯金口座の解約、不動産の名義変更、借金の返済などを行います。
- 遺贈の放棄・限定承認
- 遺贈を放棄したり、他の相続人と一緒に限定承認を選択できます。
- 限定承認は、プラスの遺産からマイナスの遺産を差し引いたプラス遺産部分を相続する方法です。
- 遺産の処分・清算
- 単に権利を譲り受けるだけでなく、遺言者の意思を尊重し、遺産の処分や清算を行います。
- 限定承認は、遺産の処分・清算を行う際に有効な手段となります。
- その他
- 遺言執行者の選任、寄与分請求、寄与分減殺請求など、相続人と同じ権利を行使できます。
包括受遺者が準確定申告書を提出できる
被相続人が個人事業主など、毎年確定申告が必要な方だった場合、亡くなってから4ヶ月以内に相続人が故人に代わって確定申告を行う必要があります。
これを「準確定申告」といいます。
準確定申告は原則として相続人が行うものですが、包括受遺者がいる場合は、包括受遺者が提出することもできます。
相続財産調査も可能なのが包括受遺者なので、準確定申告に向けて準備する中で、相続財産を正確に把握しましょう。
準確定申告で必要となる書類
- 準確定申告書
- 死亡届受理証明書
- 戸籍謄本
- 印鑑
- 被相続人の所得に関する資料
相続財産の調査方法
- 通帳や証書などの金融機関の資料を確認する
- 不動産登記簿謄本を取得する
- 被相続人の交友関係者に聞き込みをする
包括受遺者についてのまとめ
ここまで、包括受遺者とは何なのか?についてお伝えしてきました。
包括受遺者の要点をまとめると以下の通りです。
- 包括受遺者は、遺産の全部または一部を単独で相続することになる。
- 包括受遺者と相続人の違いは、遺言によって特定の財産ではなく、被相続人の財産全体を受け継ぐ者を包括受遺者といい、相続人は法律によって定められた遺産を受け継ぐ権利を持つ者を相続人という。
- 包括受遺者は、遺産のすべてを相続する場合には遺産の総額に対して相続税を納めることになる。
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。